染付考察〜ジャパンブルーの粋〜

染付古便器の粋を読んで

出光美術館で開催中の、染付展で、青い器への興味が広がったので、早速、図書館で染付に関する一冊を見つけました。

染付古便器の粋―清らかさの考察 (INAXミュージアムブック)

執筆者の1名は、出光美術館主任学芸員、荒川氏。刊行は、2007年ですが、展覧会振り返りには、良さそうです。

 

彩りへの希求”ききゅう)

藍と白の魔力について”  人が毎日の暮らしの中で眼にする自然美への畏敬から、その色彩を身のまわりにおいておきたいと希求するのではないか。青という色彩は、人に安らぎを与える。

「青は藍より出でて藍より青し」

中国思想家 荀子(じゅんし)紀元前三世紀

絹や麻布などを青く染めるとき、藍草を使うのがが、その藍草そのものの青緑色よりも、より美麗な青色に染まりつくす

中国で藍染が発明されてから二千年近くの年月を経た14世紀元の時代に、純白の磁器の上に、酸化コバルトという顔料で模様を描いて、透明な釉をかけて焼く技法が新たに発明された。

 

「ジャパン・ブルー」

藍の色彩は、ジャパン・ブルー 染色家吉岡幸雄氏

日本では、藍染は、5世紀の頃よりはじまったが、それから一千年以上の時を経た江戸時代の始め、人々は新たな青藍の彩りに出会う。日本で木綿が栽培されるようになり、藍染が庶民に流行し、同時に、木漆を食器としていた食卓も、純白のかたい磁器に変化する。

ゴワゴワの麻から、肌触のよい木綿繊維へ

民俗学者、柳田國男氏が、「 木綿以前の事 (岩波文庫)の中で、それまでゴワゴワの麻から、肌触りのよい木綿という繊維が普及したことと、瀬戸物の碗を手に入れたことが、近代日本人庶民が得たすばらしいものだとし、江戸の人々は、これらの普及によって、すごく心が豊かになったのではないかと論じています。
江戸東京博物館・教授 小澤弘(おざわひろむ)氏の項目より

 

 

便器まで染付で装飾する近代日本人の心意気

便器までを装飾する近代日本を鼓舞した染付の美と力 湧きあがらせた明治人の心意気。

谷崎潤一郎、陰翳礼讃 (中公文庫)

トイレ、厠は、私ひとりがたたずむための、秘められた部屋、「秘室」であるだけでなく、私たちが日々招かれる、ひとつの「応接室」であろう。厠では三つのものに、出会う。厠というプライヴェートな小空間を愛でる。
谷崎潤一郎、陰翳礼讃 (中公文庫)

「自然(自分の生理的分身を含めた)」、

「人間(個室でこそ見つめることのできる)」、

「この時代(自分が生きてそれに含まれる)」。

 

「装飾する魂」

古便器は、ジャポニズムの絵画や工芸のように外国人の観賞用に売るためのものではなく、あくまで日本人のためのもの。

多摩美術大学、鶴岡真弓氏の項目より

 

本書は、東郷神社の青空市で「便器」と出会ったことで、「古便器コレクション」が始まったコレクター、千羽他可之(せんばたかし)氏の語りでまとめられます。

 

私感付け足し:

日常捨てるほどにものがありふれてしまった現代、厠に入ってさえも、人は、情報を求めるような知的端末を手に入れた現代人は、厠で出会う三つのものには遭遇できないのであろうか?染付で描き出された藍色との対話は、手に握る端末動画に委ねられてしまった。

100円出せば、印刷技術の高度化で、焼き付けられたデザインの商品が手に入る。今から一千年経過すれば、未来の人類も、現代の100均文化を、どのように評価するのだろうか?

 

古便器の装飾に多く使われた「牡丹にスズメ」などの絵柄は、食器にはまったく見かけられないという。近代日本人の心意気を思いだしたい。

染付展(出光美術館)で多くの事を学んだ一連の出来事である。